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管理人の日記ログ
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一定の役割を果たしていた時期もあったが、最終的に育児放棄をされて終わった |
本日、驚きのニュースが界隈に流れた。あの、ソニー携帯ゲーム機のPSvitaについて、「2019年度で生産は終了となり、新型および後継機については予定が無い」ということが明らかになったのである。以前にも、PSvitaフリープレイが来年3月で終了というニュースで嫌な予感がしていたが、ついに出荷が終わる予定だということが正式に判明したのである。一応、後継機については「現時点での発表の計画は無い」と濁してはいるものの、まさか前世代が完全に終了してから発売することはあるまい。もう後継機は出ないか、出るとしてもDL版のみなど機能を限定された小規模なハードにしかならないだろう。
――というわけで。前日に、PS4/「デトロイト:ビカムヒューマン」の感想記事を書いたばかり(【2018/9/19】)なのであるが、さすがにこのニュースは衝撃的ということで、もともと用意していた「PSvitaの思い出」という記事を、急いで書き上げることにしたのである。やれ、最近の当サイトとしては、非常に珍しい連続更新なのであるが、それくらい、このVita終了決定はインパクトの大きなニュースだったのだ。…そんなわけで、次の段落からが、当初の前置きとするはずだった文章のスタートである。なお、本文中で大きく状況が変わった部分は、あえて削除せず、取り消し線(これです)で示している。
先日、約4ヶ月の連載に及んでいたFF10プレイ日誌が無事に終了したが、そこではPSvita版の「ファイナルファンタジー10
HDリマスター」が役立ってくれた。だが、そのプレイも終わった今、今後はもうPSvita用の新作を遊ぶことは無いと思われる。ということで、本日は「PSvitaの思い出」と題し、Vitaが活躍していた思い出を振り返ってみることにしよう。ただし、その内容は、どうしてもネガティブなものにならざるを得ない。
…まず、「PlayStation
Vita」は、2011年12月に発売された、「プレイステーション」ブランドとして2代目の携帯ゲーム機であり、一時代を作り上げた「PSP(プレイステーション・ポータブル)」の後継機である。PSPから大きく進歩した点として、本体の画素数は合計4倍(縦横2倍、960×544)となり、画像の鮮明度が大きく上がった。また、1000番台と呼ばれる初期型では、本体ディスプレイに有機ELを用いており、非常に美しい発色を楽しむことができる。これらの画像面に関しては、今でこそ携帯電話でもHD(1280×720)やFullHD(1920×1080)が一般的となったものの、発売当時としては驚異的な高画質であった。また、PSPの左スライドパットに対し、Vitaでは「倒せるアナログスティックが」「左右に」搭載されて操作感が向上し、タッチパネルも前面と後面に搭載されている。本体の処理性能も、PS1と2の間くらいであったPSPから正当進化し、ちょうどPS2と3の真ん中ほどとなっている。
――とまあ、Vita本体性能としては実に恵まれていたのだが、逆に業界事情には全く恵まれないハードであった。まず、PSPでの大ヒットタイトルと言えば、あの「モンスターハンター」シリーズであり、その他にも私は遊戯王カードを楽しめる「タッグフォース」シリーズを愛好しており、この2つは以前の「PSPの思い出」という記事にも、PSPの代表的タイトルとして挙げていた(【2016/1/26】)。ところが、この2つの作品は、それぞれ事情は異なるものの、両方ともVitaでは素直な続編が発売されず、その意味でVitaは開幕から難しい航海となってしまったのである。
そんな中での、私のVitaで思い出に残っている新作タイトルとしては、パッと思いついたもので、「地球防衛軍3
PORTABLE」「『ダンガンロンパ』シリーズ(1・2リロード&V3)」「ペルソナ4:ザ・ゴールデン」「ゴッドイーター2:レイジバースト」「ネットハイ」「ワールド・オブ・ファイナルファンタジー」「デジモンストーリー:サイバースルゥース&ハッカーズメモリー」と、最後に「ファイナルファンタジー10:HDリマスター」あたりであろうか。また、遊戯王カードの「タッグフォース」シリーズは、一応の「遊戯王アークファイブ:タッグフォーススペシャル」という続編が2015年1月に登場し、既にVitaが十分に普及している中でまさかのPSPソフトとして発売されたのだが、一応はVita時代に出たタイトルとして、ここに並べておくことにしよう。
…まあ、これと言って絞りきれていないのだが、この雑食なところがVitaの良いところでもあり、弱点でもあった。とりわけ時期的には、「ゴッドイーター2:レイジバースト」「デジモンストーリー:サイバースルゥース」「ネットハイ」の3作を遊べた2015年が、私にとってのVita全盛期であった。その後も、「ダンガンロンパV3」や「ワールド・オブ・ファイナルファンタジー」など、PS4版が同時発売になったタイトルにおいても、携帯機ならではの遊びやすさを活かし、今年になってからは、FF10やり込みの稼ぎプレイ用として、寝っ転がりながら作業できるFF10HDのVita版が役立ってくれた。
――その他、Vitaは、プレイステーションの過去タイトルをプレイできる携帯機としての需要も大きかった。まず、PS4はPS1/2/3のディスク版&ダウンロード版ソフトを一切プレイすることができず、過去の資産を活かすハードとして使用ができない。その点Vitaは、Vita専用ソフトの他にも、PS1アーカイブスとPSPソフトのダウンロード版をプレイすることができる。これらの古いソフトは、最新ゲームと比べるとグラフィックや操作性で大きく劣るものの、携帯機ならそれもそこまで苦にさせない。主に遊んだタイトルは、「クラッシュ・バンディクー」や「ロックマンX」「バイオハザード」などといった定番アクションから、「ファイナルファンタジー・タクティクス」といった今回が初プレイとなるタイトルも並んでいる。こういった過去作を手軽にプレイできる点は、Vitaの大きな魅力であり、この点だけに限れば、Vitaは今後も一線級のハードとして活躍できることだろう。
こうして見てみると、実に多くのソフトが遊べたものだけれど、やはり晩年の印象が強くて… |
そんなわけで。少し前まではVitaは私にとって非常に理想的なハードだったのだが、もう現在ではその熱も冷めてしまったのである。
…というのも、私がVitaで新作タイトルを買ったのは、去年冬の「デジモンストーリーサイバースルゥース:ハッカーズメモリー」が最後であり、その後には新作を買うことはもちろん、買おうと検討することすらなくなった。一応、今でもVita用の新作ソフトは発売されてはいるが、ほとんどはPS4版と同時発売であり、おこぼれ的な感じである。そして、一時期はインディーズタイトルなどが積極的に対応しており、携帯機との相性は悪くなかったのであるが、そこですら最近はVitaが無視されることも増えてしまった。もちろん、PSPも末期には似たような状態となっていたのであるが、このVitaには未だに次世代機が登場していないという違いが存在する。恐らく、もう今後は発売されないであろう。予定は無いことが発表されました。
やれ。Vitaについて、「業界事情に翻弄された」と言うと、つい被害者として捉えてしまうものだが、どちらかと言えば産みの親であるソニーも、Vitaを見殺しにした主犯格の一人ではないだろうか。お金を掛けてオリジナルタイトルを投入していたのも初期だけであるし、最近では各種発表イベントでもPS4ソフトしか紹介しないことが普通となった。一時期は積極的であったインディーズタイトルも、最近ではもう誘致していないのだろう。そしてハード面では、私は途中で初期型の1000番台から2000番台に買い替えたのであるが、これがディスプレイが有機ELからただの液晶になった劣化版であり、しかもスティックの動作不良が頻発し、値段も下がってはいないというソニーらしくない粗悪品となってしまっている。これらの問題点を解決した3000番台の登場などを望んでいたこともあったが、結局その願いは果たされそうにない。というか、例えばこの東京ゲームショーでVitaの3000番台が登場したとして、もうこの状況で新たに買うという人はあまり居ないのではないだろうか…。Vitaの新型が出る予定も無いそうです。
――そして、決定的なのが、PSplusのVitaフリープレイが来年3月で終了だということである。同じ時期にPS3も終了するのであるが、PS3に関しては据え置き機として既にPS4への移行が完全に済んでおり、むしろ責務を全うしたうえでの勇退である。ところが、VitaはPS3よりも発売が後なうえに、携帯機としてPS4ではカバーしきれない価値が存在する。そんなVitaまで、同じタイミングで終了させてしまうのである。しかも、最後の1年だから、せめて盛大に盛り上げてくれるのかと思いきや、いつも通り微妙なタイトルしか配信をしてくれない。どうしてこんな酷いことをするんだ…?
そんなわけで。Vitaは、業界事情に翻弄されたハードであった。もちろん、2015年頃には多数のソフトが発売され、業界で一定の役割を果たしたが、所詮は一定の役割を果たしたというだけであり、積極的な擁護はそこまでである。その後は、産みの親であるソニーからも見放され、次世代機も登場せず、フリープレイ配信対象からはPS3と同時に外され、惜しまれながらその生涯を閉じるという形になった。恐らく、遠からず生産終了も発表されるであろう。2019年度中に生産終了をすることが発表されました。
…まあ。確かに、この国のゲーム事情を考えると、携帯機はどうしても難しい存在となってしまう。ご存じの通り、日本人は携帯電話の課金ゲームが世界で最も好きな民族であり、ブランドや広告といったイメージ戦略にも流されやすい。しかも、ゲーム専用機の性能を超えうるスマートフォンが多くの人に普及しており、そもそも日本以外では携帯型のゲーム専用機という文化自体があまり受け入れられていないのだ。よって、例えばソニーがVitaを強引に流行らせようするのなら、それは恐らく「莫大な開発費と広告費を投入したうえで、ネット工作まで動員し、日本でしかヒットしないオリジナルタイトルをゴリ押しする」といった感じになるだろうが、もちろん私はこんなことをやるべきだったとは思わない。そんなことをするのなら、「海外の有力スタジオに投資をして、世界でヒットするPS4の大作を作り、それを日本にも輸入する」という、現実のソニーが行っている路線のほうが遥かにマシである。
――しかしながら。それでも、今のようにVitaをさっさと葬ってしまうような態度は、決して看過することができない。上記の通り、Vita…というか、ゲーム専用携帯機自体が、新作タイトルを出すための場所として適切ではなくなっている。しかしながら、過去のソフト資産をプレイするアーカイブス用ハードとしてはVitaは未だに最高峰であり、その路線ならば次世代機を出す価値も存在するであろう。それを、まるで育児放棄のように、職務を全うしたPS3と共に葬ってしまうのは、実に悲しい。まあ、スマホ狂の日本には、これ以上の投資をする価値が無いということなのだろうか。ガッカリである。
やれ。昨日の「デトロイト:ビカムヒューマン」の感想などからも分かるように、世界企業としてのSIEは素晴らしく、ゲーム業界を引っ張っていくに相応しい、信頼できる存在となっている。しかしながら、その“日本支部”は、残念ながら優秀とは言い難いようだ。そこには、かつて初代プレイステーションで市場を奪い取った勢いは一切存在せず、やることなすこと大半が滑っている。もう、ソニーは海外ゲームの翻訳だけやっていれば良いんじゃないかな…。
(2018年9月20日)
並べてみると確かに日本版(左)のほうが面白そうなので日本スタッフGJ |
今年5月に発売されたPS4/「デトロイト:ビカムヒューマン(Detroit: Become
Human)」の2周目をクリアしたので、その感想を書いてみます。概要を述べると、ノベルゲーながらもPS4の性能を活かし、翻訳も丁寧に行われた、ソニーらしいゲームだと思いました。
…まず、本作「デトロイト:ビカムヒューマン」は、今年5月25日に発売された海外PS4ソフトであり、夢のようなAI&ロボット技術が実現した2038年のアメリカを舞台とし、選択肢を選んでストーリーを楽しんでいくタイプのゲームである。この手の作品は、世間では「アドベンチャー」とジャンル分けしたり、または映像を視聴するという意味で「ムービーゲー」と呼んだりすることもあるが、私はあえて「ノベルゲー」と称してみたいと思う。その理由は、主として物語を楽しむゲームであり、日本のいわゆる“テキストアドベンチャー”と根本部分が同じであるからだ。ただし、力の入り方は雲泥の差であるが。
――さて、私に関しては、先日PS4で「アンチャーテッド:海賊王と最後の秘宝」をクリアーし、最終章が非常に残念という感想に終わった(【2018/8/10】)ものの、そのクオリティの高さには圧倒され、引き続き海外ゲームをプレイしてみたいという気持ちがあった。そして私は、現在はゲームに大量のお金を使えるような状況では無いものの、PSNのアカウントを見てみると、既にかなりの額がチャージをされていることが分かった。この通貨は、PSNのサービスが続く限り消滅することは無いとされているが、現金に戻すこともできない。ならば、たまには新作を買ってみるのも良いだろう…ということで、私は前々から気になっていた「デトロイト:ビカムヒューマン」を購入してみることにしたのである。
そんな感じで本作をプレイした感想は、上記の通り「PS4の性能を活かした丁寧なノベルゲー」というものであった。
…まずは、この手のゲームでのキモとなる、物語部分についての感想についてから行ってみよう。本作の舞台は2038年の米デトロイト市であり、そこでは人間と同等以上の能力を持ったアンドロイドが実用化され、人間の生活を助けていた。しかしながら、良いことばかりではなく、例えばアンドロイドに仕事を奪われて失業率が3割に達していたり、自我に目覚めたアンドロイドによる犯罪が多発するといった負の側面も存在している。そんな中で、プレイヤーは3人の異なる主人公を順番に操り、作中の事件が起こる1週間程度を体験していく。通しでのプレイ時間は、概ね15時間程度と言ったところだろうか。
――さて、この「高度に進化した機械が、人間に反旗を翻す」という世界設定に関しては、例えば古くは「ロックマンX」シリーズなどでも扱われてきており、まあSFとしては有り触れたテーマである。ただ、2018年の現在では、世間の話題としてAIやロボットが挙がることも増えてきているため、より現実味をもって我々に迫ってくると言えよう。そして、本作での取り扱い方は、例えば「ロボットと人間が友情を芽生えさせながら悪と戦っていく」といった王道タイプとは異なり、人種差別(のようなもの)といった重い社会的テーマを、真正面から描くものである。それだけに、単純な勧善懲悪では終わらない、深みのある物語になっている。そしてシナリオは、自らの選択によって、様々な展開へと分岐をしていく。私としては、特に1周目で迎えた悲痛な結末は、自らの優柔不断を強く反省させるものであったと同時に、2周目では必ずハッピーエンドを見てやろうと決意をさせた。
そして、その物語の語り方であるが、これもまたゲームならではの特性を活かしていると言える。
…まず本作の操作部分では、3Dのマップを探索し、物を調べながらストーリーを進めていくという形式を取る。そのチェックできる場所については、R2ボタンで一気に表示ができるため、「物語の進め方が分からなくなってイライラする」といったことは一切存在しない。また、ポイントの調べ方に関しては、右スティックをぐるりと回したり、スライドパッドをゴシゴシしたりといった特徴的な入力をする必要があるのだが、それもまた「操作が単純すぎて作業感を覚える」と「操作が複雑すぎてストレスを感じる」の間のちょうど上手いところを取っていると言えよう。また、物語を分岐させる選択肢に関しては、例えば「傷を負った仲間を助けるか、見殺しにするか」「仲間が撃ち殺されている中、暴力に訴えるか、あくまで対話を試みるか」「銃を構えた犯罪者に対して、人間を守るため盾となるか、それとも犯人の方へ向かっていくか」などといったシビアな選択が連続で表示され、「ただのゲーム」と言わせない迫力がある。そういった選択肢を自分で選んでいくことによる没入感は、映像だけの作品を遥かに凌駕し、本作の最大の魅力であると言えよう。
――そして。本作では、そうやって登場人物に感情移入させていくスタイルを取っているため、海外ゲーとしては珍しく、日本人にも親しみやすい物語になっている。例えば、私のお気に入りキャラクターは、コナー&ハンクの刑事コンビ…はみんな好きだと思うので、意外なところを挙げると、“過激派おばさん”ことノースである。いや見た目やキャラクター性は全く好きではないのだが、なぜか作中で何度もイメチェンを繰り返していくところや、人を殺したり物を燃やしたりすると好感度が上がっていくポンコツ具合、男キャラクターとの友情ルートが無いくせにこのおばさんとの恋愛ルートが用意されている意味不明さ、そして自分で付けた“過激派おばさん”というあだ名の驚異的な語感の良さから、一種の“ネタキャラ”として親しんでいった。
簡単には決められない選択肢と、それによって分岐していく物語への没入感は、本作の大きな魅力 |
さて、ここまで、物語面を中心に「デトロイト:ビカムヒューマン」の感想を述べてきたが、ここからはそれ以外のシステム面について語っていこう。
…まず、本作はPS4で発売されたノベルゲーであり、プレイ前の私は(;^o^)「PS4であえて物語を読むゲームを出すか…?」と思っていたものであったが、その心配は無用であり、むしろPS4の特性をフル活用した作品になっている。グラフィックに関しては、間違いなくPS4最高クラスであり、単純に画像として美しいことはもちろん、機械ならではの特性を活かしたサイバーな演出は、本作の未来的な世界観を強く印象付けてくれる。また、オンライン要素も存在し、チャプターのクリア後には世界で何割の人がその選択肢を選んだかということを知ることができる。それを見て、自分の選択がどれくらい世間一般の感覚と合っているか知れたり、レアルートに到達できた特別感を味わうことができる。また、上でも少し述べたが、システム面も大変優れており、少なくとも1周ゲームを終えるまではストレスに感じる要素は一切無く、ロードも新規ゲーム開始時以外は全く存在しない。というか、もはや海外ゲームがグラフィックと操作性で優れていることは当たり前となりつつある。日本ゲームの優れている点は…ヒロインのかわいさとか、あと音楽?
――そして、それらの評価点を下支えしているのが、日本SIEスタッフの優れたローカライズである。こういった海外ゲーは、言語の翻訳はもちろんとして、例えば×が決定で○がキャンセルなのを逆にしたりなどと、日本文化に落とし入れるための様々な作業を行わなければならず、これを「ローカライズ」と呼ぶ。ここで失敗してしまうと、「殺せ、ロシア人だ」みたいな事件が生まれてしまうわけであるが、「デトロイト:ビカムヒューマン」のローカライズは、作中を通して極めて自然なものとなっている。特に目立たない点ではあるが、こういうのは違和感を覚えさせないのが重要なのだ。加えて、日本語吹き替えも優れており、王道キャラクターから嫌味な敵役、そしてねっとりとした変態科学者まで、様々な登場人物に息を吹き込んでくれている。本作の「海外ドラマっぽい雰囲気」は、彼ら声優たちの名演が支えている面も大きいだろう。
しかしながら。本作の唯一にして最大の問題点として挙げなければならないのが、2周目以降のリプレイ性である。
…やれ。私は、初回プレイでは主要な登場人物が全員死亡か処分となる悲痛なエンディングを迎えたため、2周目では全員を助けてやろうと思ったのだが、一度シナリオをクリアしても「イベントスキップ」「早送り」「任意セーブ」と言った機能が追加されることは無い。一応、チャプターセレクトも有ることは有るのだが、その機能も完璧ではなく、しかも一部のルートをオープンするためには、序盤から特定のパラメーターを上げ続けねばならず、上げ方のヒントとなるようなガイド機能なども存在しない。結果として、私の2周目は、序盤から選択肢ごとにいちいちポーズをして攻略サイトを参照するという、著しく窮屈なプレイとなってしまった。恐らく、そこまで厳密にする必要は無かったのだろうが…。
――とはいえ、確かに、やり直し機能が不親切なのは残念だが、制作側は「できる限りリセットをせず一本の物語を楽しんでほしい」という趣旨のことを述べており、この不便さは意図的なものなのかもしれない。あまり親切すぎると、それこそ日本のエ○ゲーのように選択肢まで一気にスキップし、未読部分だけを読み進めていくという作業感の強い内容となり、結局のところ一本道のテキストアドベンチャーと変わらなくなってしまう。まあ、本作くらいのクオリティの高い物語が演出できるのならば、そういうゲームデザインでも私は良かったと思うのだが…。
そんなわけで、「デトロイト:ビカムヒューマン」は、PS4の性能を最大限に活かしたノベルゲームであり、皆さまにも積極的にお勧めできる作品である。特に、PS4を持っており、海外ゲーに触れてみたくなったり、アクションやシューティングなどとは一味違ったゲームを遊んでみたいという人には良いだろう。一応、PSNでは体験版が配信されており、必ずしも本作の魅力を表現しきれているとは言えない(単発エピソードなので物語性が薄く、独特の操作性も当時の私は面白さより面倒くささを感じた。さらに、交渉ものなので、全ての地点を調べる=事件解決という図式にはならない。そして、交渉部分だけをやり直すような機能が存在せず、周回プレイのやりづらさだけはしっかり表現できている)のだが、そこから遊んでみるというのも悪くないかもしれない。
…ちなみに本作は、日本ではソニー販売という点も嬉しく、これから幾度と無くダウンロード版のセールに登場してくれることだろう。例えば現在でも、東京ゲームショー2018記念セールとして33%OFFの4992円で購入可能であり、かつセール対象商品を合計10000円以上買うと2000円ぶんのチケットを全員にプレゼント(どちらも26日まで)という極めて太っ腹なセールが行われている。そう言えば、私が購入をしたのも、1ヶ月ほど前のサマーセールであった。もし、金銭面で迷っている人に関しては、次回以降の更なるセールで手に取っていただけるというのも良いだろう。
――というわけで。本作は、PS4であえて発売したノベルゲーとして、そしていま話題のAI&ロボット技術を題材とした物語として、どちらも大きな意義を持つ作品である。少なくとも1周目クリアまでは、緊張感が途切れることは無く、そしてクリア後には、他の人がどのようなルートを辿ったかということが気になって、食い入るようにプレイ動画や感想記事を探してしまうはずだ。本作は、「文字を読むゲーム」というジャンルとしての制約はあるものの、それ以上の広がりを持っており、限りなく傑作に近い良作であると言えるだろう。機会を見付けて、是非とも手に取っていただきたいタイトルである。
(2018年9月20日)
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