産まれてきた君へ

  

誰かの言葉に、こういうのがあった。
「人は、産まれてきた その時に、
 この世に産まれてきた事を悲しんで泣くのだ」と。
「これから起きる苦しみや悲しみを思い、泣くのだ」 と。

しかし君は、必死に生きようとする。
母の胎内にいた時も、この殺伐とした世に出てきてからも。
生き抜く為に、必死に 泣く。
そこまでして、何故 生きようとするのだろう。

その握り締めた手には、何があるのだろう

その大きな瞳は、何を観ようとしているのだろう

その泣き叫ぶ声は、何を言おうとしているのだろう

俺に、どうしろと 言うのだろう

やがて、微笑んだり笑ったりするようになり、
母を見て微笑み、抱く事をねだる。
俺の手の中で、信じきって動きまわり、
母の胸で、安心しきって 眠る。
産まれてきた事が、これ以上ないほどの幸せという顔をして。

その小さな手は、何を掴もうとしているのだろう

その二つの目で、何を捉えるのだろう

その笑い声は、何を呼ぶのだろう

俺には、何ができるだろう。君の為に

何が できるだろう

・・・・・・ただ、この笑顔を 守る事だけ

  

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