夢 また 夢

  

くすくすっという笑い声が 頭の上で聞こえる。
”あら? また眠ってしまっているのね
 わたしといると、いつも そうね”
いつも?
確かに、いつもかもしれないな。
君の膝は、とても心地良いから。
眠りたくなくても、いつの間にか夢に入っている。
夢は、見たくないのに。

夢の中では、俺はとんでもない奴なんだ。
邪魔な奴は、親兄弟でも平気で殺っちまうような奴で、
いや、むしろ、人を殺る為に生きているような奴で、
人を殺るのが生き甲斐で、
欲求を満たす為に、自ら好んで戦場にも行っているんだ。
表情一つ変えずに、この手でいくつの臓をえぐり出したことか・・・
いくつもの頭を砕き、飛び散る血しぶきや脳髄に 見惚れているんだ。
まるで、花火でも見るかのように。

・・・・・・目が覚めて 君がいると、あぁ、夢だったんだ って、
本当の俺は、ここに居る俺なんだよな って、安心する。
俺は、ここに 居るんだよな。
あれは みんな、夢なんだよな。
・・・時々、君とこうしている事が 夢なんじゃないかと、
君は 俺の夢の中にだけ住んでいるんじゃないかと、不安になるんだ。
本当の俺は・・・・・・・・・
さぁ、キスしておくれ。いつものように。
そして、しっかりと 抱きしめておくれ。

”あなたは、抱きしめてはくれないのね
 あなたからは、キスもしてくれないのね
 いつも  いつも、そうね”
いつも?
そういえば、そうだな。俺から抱きしめた事は無いな。
俺から抱きしめてキスした事は、無かったな。
いつも、目覚めると 君が居て・・・・・・
いつも そうだ。・・・いつも? 何故いつもそうなんだ?
こうして君と居る前は、何をしていたんだろう。
この後は、何をしていたんだろう。
・・・何故、何故思い出せないんだ? 何故 思い出せないんだ!!

”何故? ・・・・・何故かしらね”
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くすくすっという笑い声が 頭の上で聞こえる。
”あら? また眠ってしまっているのね
 わたしといると、いつも そうね”
いつも?
確かに、いつもかもしれないな。
君の膝は、とても心地良いから。
眠りたくなくても、いつの間にか夢に入っている。
夢は、見たくないのに。
あぁ・・・・・・なのに、また、夢に入ってゆく。
君と、ずっとこうしていたいのに・・・・・・・

  

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