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管理人の日記
「町田」は有るけど「相模原」は無い、「大津」は有るけど「滋賀」は無い…
「福島」は有って「新潟」は無い、「石川」は有って「富山」は無い、「上野」は有って「御徒町」は無い・・・何のことかと言うと、これは人の名字の話である。
・・・というのも、「名字」というものは、古くは「藤原氏」などで知られるように、良家の人々だけが名乗って良いものとなっていた。ところが、江戸〜明治にかけて全員が「名字」を持つよう決められてしまったため、普通の人々も急に「名字」というものを作らなければならなくなった。だから、その時の価値観で、今に続く「名字」は制作されたのである。
――というわけで、今の我々にも引き継がれている「名字」は、そんな一種の「流行」で決まったものなのである。やれ、ご先祖様たちだって、俺たちとそう離れた考えをしているということは無いだろう。だから、「名字」というものを考える際には、聖域的な何かと考えるよりも、「当時の流行で適当に決めてしまった」という見方のほうが適切であろう。恐らく、今の世間では有り触れた「佐藤」とか「山田」とかであっても、当時としては最高峰にナウい言葉であったはずだ。歴史を美的なものとして考えることも時には必要であるが、庶民的な視点から考察するのも、これまた一興であるというものだろう。
さて、そんな感じで持たされた「名字」によって、我々は様々なエピソードを経験することになった。その代表的なものは、「小学校の頃の席順」であろう。
・・・やれ、今はどうなっているか知らないが、俺の頃は「男女混合の名字あいうえお順」でクラスの出席番号が決められていたため、「青木」という名字の人が常に最初に名前を呼ばれることになっていた。彼はドッジボールの時間でも青と黄色のボールを持って投げるという壮大な名前ネタをやらかしていたため、マイナー名字の俺としては、少し嫉妬していたものであった。何せ、常に最初に名前を呼ばれるのである。それに比べて俺は、最初でも最後でも無い、毒にも薬にもならない名字であったため、どこか損をしているという気持ちになっていた。なお現代社会では、こういう意見を増やしすぎると、今度は出席番号をバラバラにするという仰天の解決法を図ってしまうため、心の底で差別だと思っていても、あまり声を大きくしてはいけない。
――ちなみに現代では、結婚をすると男性側の名字に統一されるというのが一般的であるが、そうではなく女性側の物にしてしまったり、はたまた夫婦で別の名字を名乗る場合もある。そんな、いわゆる「夫婦別姓」の制度に対しては、ご存じの通り様々な議論が存在するところであるが、そもそも俺は結婚できないため、それに関して意見をするのはやめておこう。その他、出席番号を最初にしたければ「ああか」さんと、最後にしたければ「わんりき」さんあたりと結婚するのが筋というものであるが、それまた結婚しなければ関係が無いというものである。
ところで、俺の名字はいわゆる“マイナー名字”であるため、親しみやすい「あだ名が」付けられることは無かったのであるが・・・実は俺は、「名字+さん」で呼ばれるのがとても好きだったりするのである。
・・・というのも、最近の世間では、むしろそういった「あだ名」はあまり親しくない人に使う傾向があるのだ。何故なら、親しくない人には好かれようとして“あだ名”を用いるが、親しくなってしまえばそういうものは関係無くなり、独自の名前で呼び始める。そしてそれは、往々にして先祖返りである「○○さん」というものであったりもするのだ。文字通り、一種の「先祖返り」と言える現象が起きているのだ。
――やれ、俺は誰かが言っていた「呼び名の変わり目が人間関係の変わり目」という言葉が存在する。俺は、この言葉を正しいと思っている。最初は「あだ名」で親しくなろうとして、その後に仲良くなれば、「最初の名前」で呼び始める・・・そういう逆転現象が、現代の若者達の間では起こっているのだ。なお、そもそも話しかけられた時点で強い親しみを感じるとか、そういうことは言ってはいけない。
というわけで、「名字」というものは、僅か数世代前のご先祖様が作ったものであり、それほどまでにスピリチュアルなものとして扱う必要は無いが、かと言ってどうしようもなく無下にすべきものというわけでもなく、それなりに人の個性を表している面白いものということが分かった。何か古典みたいな結論である。
・・・しっかしまあ、現在まで伝わる「名字」が江戸〜明治時代の流行で作られた、ということはである。もし、平成の現代に「名字」の制度がスタートしたら、「田中」や「松田」「高松」といったよくある名字が付けられていたかもしれないが、今でいうキラキラネームならぬキラキラ名字が出来上がっていたかもしれない。「光宙」とか「雷宙」とか「運虎」とか「珍々」とか・・・。
(2012年11月17日) 4325 PV
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