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管理人の日記
やっと続編を素直に期待できるようになったと思います。
スマホ版でやりました。実に良かった |
「逆転裁判」は、カプコンから発売されている推理ゲームのシリーズである。内容は、文字通り「裁判」をテーマとし、主人公の弁護士を操作して被告人を無罪へと導く、というアドベンチャーゲーム(文字を読むゲーム)であり、公式ジャンルは「法廷バトル」とされている。その、「証言」を「尋問」し、矛盾点に「証拠品」を突きつけて謎を解いていくというシステムは、後の推理ゲームの多くが類似のシステムを採用するほどの完成度を誇っている。その他、この手のゲームの最重要ポイントである「ストーリー性」はもちろんとして、「演出」「キャラクター」「推理難易度」など、全ての要素がバランス良く出来ており、遊びやすいうえに奥深くなっている。まさしく、「逆転裁判」は、推理ゲーの定番と言える作品だった…。
…やれ。ここで「だった」と過去形で書いたのは、もちろんあの『4』の存在があるからである。逆転裁判は、2002年にGBA(ゲームボーイアドバンス)で初作の『1』が発売され、その後に『2』『3』と1年間隔で続編が登場し、その人気を不動のものにしていった。ところが、そこからしばらく空けて、2007年にNDS(初代ニンテンドーDS)で発売された『4』が、とんでもない失敗作であり、しかもあろうことか当時絶頂期だったDSブームが合わさって50万本以上を売り上げてしまい、演出の都合上この作品を無かったことにもできず、シリーズは完全に迷宮入りをしてしまったのである。
――まったく。『4』がどれくらい酷い作品だったかは、恐らく当サイトの読者層なら当時直接プレイされたという方も多いだろうが、一言で表すなら話を読むゲームなのに話がつまらない(犯行のトリック・犯人の動機・謎の明かし方などが崩壊している。当時の感想は【2007/4/25】)という感じであり、ゲーム性は著しく低い。また、その不出来さがあまりにも激烈であったため、「『1』〜『3』から世界観を一新するはずが、旧作の人物が出しゃばったせいでストーリーが崩壊した」「現場の声とは別に、『旧作キャラクターを出せ』『当時導入されたばかりであった裁判員制度をゲームで宣伝しろ』という社内政治に翻弄されたせいで駄作になった」という“失敗例”として、今でも「逆転裁判4」の名前が挙げられることもある。「尋問」や「証拠品」によって推理ゲー全体に良き判例を示したタイトルが、あっという間に今度は不当判決となってしまったのだ。
というわけで。恐らく、多くの人のシリーズに対する記憶は、『4』で途絶えており、ひょっとしたら「『1』〜『3』は名作だったゲーム」くらいの印象で終わっているかもしれない。しかしながら、私から言わせると、今の「逆転裁判シリーズ」が持つ意味は、「駄作を出してしまったが、その不満点に真摯に向き合い続け、最終的には評価を回復させたタイトル」というものになったのである。
…というのも。2007年に『4』が発売された後は、さすがにあの評判の作品をそのまま続けるのは苦しいと判断されたのか、「逆転検事」などのスピンオフ作品で細々とシリーズが続いてきたが、それで一定の需要を取り戻すことができたのであろう、2013年に久しぶりの正統続編となる「逆転裁判5」が3DSで発売された。『5』は、物語展開などにそれなりの不満が挙がったものの、『4』のように致命的な破綻は存在せず、また『4』のキャラクターについてもある程度までフォローが為されたことで、「『1』〜『3』には及ばないが、『4』よりは良い」という程度の評価を得ることができた。私も、3DS版(当時は遊戯王のゲームのために購入していた)とスマートフォン版で、おまけシナリオまでを通して2回プレイするほど楽しんだ作品である。
――その後、2016年に、更なる続編である『6』が発売された。これに関しては、当時の私は仕事でまともにゲームをする時間が取れなかったことや、さすがに2016年にもなって3DSで新作はちょっと…という思いがあったため、スマートフォンでのアプリ版が出たらプレイをしようと決めていた。そして、2017年末に、逆転裁判シリーズのアプリ版のセール広告を見て、未プレイだったことを思い出し、2000円で購入をしてプレイを始めたのである。
さて、そんな「逆転裁判6」の私の感想はと言うと、『5』に引き続いて『4』の設定を前向きな方向で活かしており、特に最終話の壮大さは、傑作だった『1』〜『3』にも全く引けを取っていない。この作品をもって、『4』〜『6』の三部作が無事に完結したとも表現でき、『4』の悪評価は完全に回復されたと言って良いだろう。
…具体的には、まず物語は、チベットあたりをモチーフとした架空の「クライン王国」と、従来の日本の法廷が交差する形で行われ、それぞれの特性を活かした個性的な物語が展開される。また、それに伴い、シリーズの新旧キャラが数多く登場するが、ほぼ全ての人物に一定の出番が与えられており、扱いの悪さを感じるようなことは無い。また、前作『5』の不満点として挙げられることが多かった「推理の難易度が低すぎる」「調べるコマンドが自由に使えない」と言った点も、ちゃんと解決が為されている。加えて、3DSでの2作目ということで、グラフィック・演出などの基礎部分もパワーアップしている。そして、上にも書いた最終話に関しては、実質2話分の壮大なストーリーが展開され、次々と明かされる絶望的な真実とそこからの大逆転を味わうことができる。その出来は、同じく最終話の出来が強烈だった『3』の再来とも言えるものであり、クリア後には強い満足感を味わうことができた。
――逆に、不満点と言えば、大きなものとして、全5話の中で1話と4話の出来が極端に悪いということがある。まず、1話は、証人がいちいち楽器を掻き鳴らしながら喋るため極めて冗長なうえに、悪い意味で難易度が高く、あまり爽快感を得ることができない。当時は、もうここでプレイをやめようかと思ったくらいである。また、裁判パートのみの4話に関しては、冒頭の証言の時点でトリックの大半が分かってしまううえに、明確な疑問点・矛盾点をなかなか指摘することができず、ただただイライラする。しかも、操作キャラクターが「心理カウンセリング」と銘打って、「あなたは○○の感情をいだいていた。これは××だったからじゃないですか!?」と机をバンバン叩きながら証人を威圧するという不快な行為をする。それを見た検察側は、「これは悪辣な誘導尋問だ。証人は答える必要は無い」と怒りの声を上げるが、ごもっともである。しかし、裁判長が弁護側を認めることにより審理が進んでいくため、結果として登場する人物全ての評価が下がる最低のエピソードとなってしまった。この1話と4話に関しては、2話・3話・5話のクオリティでカバーができたというだけで、私は擁護をすることはできない。その他、2話に関しては、「無名スタッフの中に共犯者が居た可能性については一切議論されない」とか「本当に人を刺したのなら感触で分かるはずなのに、被告人がそれを証言しない」といった大きめの穴があるが、前述の1話・4話に比べれば崩壊というほどでもなく、むしろよく練られた出来の良い物語である。真犯人が、勝ち方にこだわったあげく負けてしまうのも、また悪役らしくて良かった。
そんな感じで。前作『5』に引き続き、「逆転裁判6」も実に楽しみがいのある作品であった。
…ということで。私は、現行の基本無料=ガチャで大量課金という集金システムがあまり好きではないため、このような適正な金額で正当な対価を得る買い切り型のゲームについては、是非とも推していきたい。まあ、この逆転裁判シリーズに関しては、「初期作品の完全リメイクは一度も行われていない(=画質を上げた移植版は多数発売されているが、ドット絵風だったGBA当時とはかなり印象が異なる)」「PSハードでは1作たりとも発売されていない」という特徴があり、あまり新規ユーザーに優しいとは言えないのだが、3DSなら全シリーズが発売されており、中古店なら安く購入することもできるだろう。また、iPhone・Androidのアプリ版は、同じくシリーズ全作品が配信されているうえに、定期的にセールが行われているため、その際に買うと良いかもしれない。初期作は、画質こそ見劣りするが、その物語は今なお色褪せず、しっかり触れれば15年以上シリーズが続いている理由も分かるというものだろう。
――さて。前述の通り、この「逆転裁判」は、結果的にゲーム業界に様々な影響を与えてきたタイトルとなった。初期は推理ゲームのひな形として、その後の『4』は人気シリーズを一転して苦境に導いた反面教師として、そして今では「ユーザーの不満に正面から向き合い、良作を出し続けたことで、地に落ちた評価を回復させた例」となった。この“大逆転劇”は、他のゲームにも波及してほしいものだな。
(2018年2月27日) 4533 PV
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